カラブリア州は、コロンブスによって唐辛子がもたらされた1493年の第2回目のアメリカ方面への航海を忘れることは無いでしょう。
紀元前5500年頃、すでにメキシコからチリのあたりで栽培が開始されていたと言われる唐辛子は、ヨーロッパの地中海域で旺盛に生育できる環境を見つけ適応し、アフリカやアジアでもそれは同様でした。
特に、カラブリア州の気候風土は唐辛子栽培に理想的で州内にたちまち広がり、コセンツァ市の哲学者トンマーソ・カンパネッラによる唐辛子についての言及は1635年に行われています。彼は著作の中で、大きくページを割いて唐辛子の主な薬効について解説しています。
当時から、貧しい人々の間で広く使われていた唐辛子ですが、市場価値のある保存食作りにも利用されていました。
唐辛子はナス科カプシクム属で、甘口のパプリカも同属です。十分な日照、温暖な気候と水はけのよい土地を好み、最低気温が5℃を下回らなくなる1月から2月にかけて、種まきが行われます。
収穫は8月から9月の間で、夏の盛りの間は収穫が出来ます。
ディアマンテ市のディアボリッキーノという品種は、カラブリア州で多く栽培されており、州を代表する唐辛子として雑誌などで広く紹介されています。
一方でピパッツァはクラーティ川が作った谷あいの地域、ロッジャーノ村界隈で見られる品種です。
唐辛子が含有するカプサイシンは、舌が焼けたような熱さを感じさせる化合物です。
カプサイシンは抗菌作用に優れ、唐辛子と共に加工された保存食は、通常よりも日持ちする傾向にあります。
ビタミンCも豊富で、抗酸化作用に大変優れていることが知られています。さらに、ノド風邪の引き始めに効果があります。
唐辛子の熱く焼ける様に辛い感覚は消化を促し、含有する痛み止めに似た成分が関節炎や神経痛などを和らげます。
さらに、唐辛子の辛さはエンドルフィンを発生させ、自然の鎮痛剤として効果があります。科学的な裏付けはありませんが、一説には媚薬として効果があるともいわれています。
カラブリア州では、生のまま、オイル漬けにして、乾燥させてクリームやサラミ(ンドゥイヤ、ソップレッサータやスピナータ)などへの利用が一般的ですが、パスタ生地に練り込んだり、肉料理に使ったり、お菓子の材料としても利用範囲が広がっています。